Studio GG

ここは同人ボードゲーム製作サークル『Studio GG』のウェブサイトです。
オリジナルボードゲームの紹介を行っています。

開拓王 The King of Frontier
きょうあくなまもの

カテゴリ: 制作ノート

こんにちは。
Studio GGのShunです。

今年もBoard Game Design Advent Calendarが始まっていますね。
今年は多忙でゲームが1つも出せなかったため、辞退させていただきましたが、ゲームマーケットで再販や海外での出版などもありましたので、書き忘れていた「きょうあくなまもの」の制作ノートを公開したいと思います。

「きょうあくなまもの」の内容につきましてはこちら↓からどうぞ。

写真サイズ


着想∼制作の動機∼


「きょうあくなまもの」の元となったゲームは、Magic :the Gathering (通称MtG)というトレーディングカードゲームです。

magic

私はMtGを長年やっていて、
最近は専ら「レガシー」という、古いカードから新しいカードまで(禁止カード以外は)ほぼ全て使うこと出来るフォーマットでプレイしています。

このMtGというゲーム、非常に面白いゲームだと思うのですが、非常にハードルが高いゲームでもあるんですよね。
具体的なハードルは、
  • ルールが難しい
  • デッキがないと遊べない
  • カードや流行りのデッキを知らないとまともに遊べない
といったものです。

特にMtGのレガシーというフォーマットで遊ぶにはデッキを組むのに約40万円程度かかり、新規参入が非常に難しくなっています。

なんとかして、
  • 簡単なルールで
  • デッキを組むことなく
  • MtGのような駆け引きを楽しめる
ゲームを作れないか、と考えたのが制作の発端です。


ミニマル化とその効用

制作の最初の段階で少枚数(ミニマル)なゲームとして構成することを考えました。

MtGにおいては情報戦(流行りのデッキなどについて知識を持っていること)が非常に重要であり、駆け引きを面白くする要因になっています。

デッキを組まないゲームでこの駆け引きを実現するために、
  • 総カード枚数を少なくし
  • 自分の手札の情報から相手の手札を推測可能
なようにしました。

当初はお互い手札6、山札が6枚の計18枚のカード構成とし、自分の手札にないカードが相手の手札にある確率を50%とするようにしました。
調整の結果、最終的には、手札が1枚ずつ減り、16枚のカード構成となりました。


アクションポイント制によるカードプレイ

さて、カードの枚数が少なくなることにより問題が生じる点があります。
TCGではカードプレイに「コスト」の支払いが必要となることが多く、MtGでは「土地」という専用のカードがそのコストを供給します。
しかし、少枚数のカードの中にコスト供給カードを入れてしまうとデザイン領域が圧迫されてしまいますし、そもそもこの「土地」システムは「土地事故(土地カードを引かない)」などの問題を起こしてしまうという欠点があります。
自分でデッキを組むゲームであれば、それが起きにくい構築も含めてテクニックと呼べますが、デッキ構築のないゲームではただの運になってしまいます。

そのため、「きょうあくなまもの」では、ボードゲームのメジャーなメカニクスである「アクションポイント制」を採用することにしました。
各手番では、決まったアクションの数(「きょうあくなまもの」では2)だけアクション(カードのプレイ)が出来るというルールです。

アクションポイント制では一般的なTCGのように徐々にコストが高い強いカードをプレイ出来るようになるという仕組みを実現できませんが、MtGのレガシーのデッキではほとんどのカードがコスト1だけで構成されていたりするため、必須の要素ではないと考えました。


カウンターチップの採用

カウンターチップ

「きょうあくなまもの」の特徴的なメカニクスと言えば、カウンターチップのメカニクスだと思います。
当初より相手のカードプレイを妨害するカウンターの要素を導入したいと思っていました。
最初は相手のカードプレイに対応して使えるカードとして導入しましたが、あまりにも強すぎました。
それもそのはず、一般的なカードがカード1枚とアクション1つを消費してプレイされるのに対し、このカウンターカードはアクションを消費することなく、カード1枚でこれを無効化できるため、アクション1つのアドバンテージを簡単に得ることが出来てしまうのです。
このため、カウンター側もアクションを消費するように変更することにしました。
あらかじめ自分ターンでカウンターチップを獲得し、それを使用してカウンターを行う、というものです。(これが「じゅうてん」の原型になります)
その後、ゲームの速度やバランスなどから、最初から2枚のカウンターチップを持つという形になりました。

なお、カウンター返しに関しても当初から検討はしていたのですが、カウンターチップ1枚で出来てしまうと、キーカードに関して、ただのカウンターチップの枚数勝負が行われるだけになってしまうことや、同数だと仕掛ける側が有利になり過ぎるなどの理由から、現在の形に落ち着きました。


カード効果のデザイン

ポーカーサイズ きょうあくなまもの

さて、TCG風のテキスト主導型のゲームにおいて最も大事なのが、個々のカード効果のデザインです。
特に「きょうあくなまもの」では、カードが16枚しかないため、その効果のデザインは非常に重要になります。

「きょうあくなまもの」は当初から再現したいゲーム性というものがありました。
それはゲーム最初から敗北のプレッシャーを与えられるクライマックス感と、その絶対絶命の状態から大逆転が出来る逆転可能性の実現です。

そもそもこの「きょうあくなまもの」というゲームを考えたのはMtGにおけるリアニメイト(捨て札を経由するコンボで強いモンスターを出すデッキ)とANT(呪文を繫ぐコンボで一撃必殺するデッキ)で対戦していたときでした。
相手のリアニメイトが高速召喚したモンスターのプレッシャーの中で、モンスターに対処しながら、勝ちをもぎ取った時の興奮が素晴らしかったのです。
しかし、実際のMtGのゲームではあまり逆転が発生することは稀で、ワンサイドゲームなることが多いのが気になりました。

そこで「きょうあくなまもの」では、このプレッシャーや逆転が発生しやすいカード構成にするべくデザインを試みました。

デザインの目安となった指標は、妨害がない状態で、 
  • 先手2ターンキル
  • 後手1ターンキル
というバランスです。

例えば、先手第1ターン目に「しょうかん」→「きょうあくなまもの」と出せば2ターンキルになります。
後手は、妨害しないと負けてしまいますが、できなくとも、
「かそく」→「ひのたま」→「はっくつ」→「ひのたま」
で1ターンキルが可能です。

先手1ターンキルが不可能であるため、どのゲームにおいても必ず両プレイヤーが行動することができます。
おそらく、ゲームが壊れない範囲での最速の調整でしょう。

また、ゲームの複雑性を上げるために、カードの効果の中に選択肢を含むカードを多く導入しました。
「ちょうさ」というカードがあります。
効果は「カードを3枚引き、2枚捨てる」というものです。
これが例えば、「カードを2枚引く」ですと、選択肢が全くないですが、3枚引き、2枚捨てるという効果にすることで、どのカードを捨てるのか、という選択肢が生まれます。

このようにカード内に選択肢を多く導入することで、ゲームが運のみではなく、プレイングが大きく影響するものとなります。

また、ハンドマネジメントするカードが多く、攻撃するカードが少ないことで、それらのカードがどこにあるのか、どれを手に入れるべきか、という形で焦点が定まり易くなり、駆け引きがより白熱しました。


ゆるいイラスト

呪文カード

ゲームデザインとは直接関係ないのですが、この「きょうあくなまもの」(日本版)はMtGという元のゲームとはかけ離れたゆるいイラストを採用しています(海外版は方向性が全く違います)。
これはこれまでTCGをプレイしてきた層だけでなく、プレイしてこなかった層にもプレイしてもらいたいと考えたためです。

ゲーマーにも楽しめる戦略性、シンプルなルール、ゆるいアートワークは今後もStudioGGのゲーム作りの指針になると思われます。


終わりに

以上が「きょうあくなまもの」の制作ノートになります。

いかがでしたでしょうか?
楽しんで読んでいただけたなら幸いです。

「きょうあくなまもの」は
  • 昔TCGをプレイしていたが、新セットを追いかけるのに疲れて辞めてしまった方
  • 全くの初心者とTCG風のゲームを気軽にプレイしたい方
  • お金がかかりそうなのが気になってTCGに手が出ない方
などには特にオススメのゲームだと思いますので、ぜひ一度プレイしてみて下さい。

ゲームマーケット2016秋でも再販予定です。
イベント価格(1000円)での販売になります。
良かったらO11 StudioGGのブースにお越しください。


今回は前回に続き、『開拓王 The King of Frontier』がどのようにしてできたのか、その過程を制作ノートという形で紹介させていただきたいと思います。

今回は二つ目のディベロップメント編として、『開拓王 The King of Frontier』がテストプレイによってどのように変わっていったかについて紹介します。
一つ目のデザイン編も合わせて読んでいただければ幸いです。


図2

初期テスト版

デザインしたゲームについて机上の検討だけではバランスが難しい部分(主に、『開拓タイル』『建物タイル』の種類とバランス)をテストプレイで検証していく必要がありました。

最初に作ったテスト版は以下のようなものです。

DSC_0296
(厚紙に印刷した紙を貼って作りました)

『開拓タイル』上に描かれるエリアは森、岩場、麦畑、都市、草原の5つのエリアがあり、
それを4辺それぞれに割り当てることを考えると、ものすごい種類のタイルが出来上がってしまいます。
そのため、タイルの種類を絞る必要がありました。

まず、ごちゃごちゃした印象を与えないため、タイルには草原を含む最大3つのエリアしか載せないこととしました。
(心理学的にも人が一度に把握できるのは3色までだそうです。4色以上あるとめんどくさいと感じるよう)

それで絞ったとしても、約90種類以上のタイルが出来てしまったのですが、とりあえずそのままプレイしてみることにしました。


次に『建物タイル』ですが、当初『建物タイル』は全面草原か全面都市のどちらかのみを考えていました。
これは、『建物』をどの向きに置いても同じになるようにしたかったためです。
どの向きに置いても同じになるようにすれば、おのずと自分から見て正しい向きになるように置くため、出来上がったタイル群の見た目が整うと考えたためです。

『建物タイル』の効果は、カルカソンヌやプエルトリコなどのゲームを参考に効果を作りました。これは実際に完成版まで残っているのがわかると思います。
同人ということもあり、パロディ的な意味合いを出したかったため、名前および効果は参考にしたものできるだけそのまま使用しました。(元ネタがわかるとちょっとニヤッとできますよね)

『建物タイル』をデザインする際に、資源の木と石の特性を出すことに注意しました。
木の建物は『消費』を支援する建物やユーティリティ的な建物が多く、コストが低めに設定されています。
それに対し、石の建物は建築戦略のための、勝利点の多い建物が多く、コストが高めに設定されています。
また、木および石の両方が必要な建物は、草原の建物になっており、開拓戦略を支援するように作られています。
建物自身は、最初のデザイン時から大きく変化しましたが、このあたりの特性については完成版でもそのまま残っています。

こうして出来たテスト版、(自分で言うのもなんですが)ぱっと見よくできてそうですが、まったくゲームになっていませんでした。
何故ゲームになっていなかったのかについて以下で説明していきます。


テストプレイにより判明した問題点

そもそもエリアが閉じない

まず、最初の問題点がこれでした。
初期段階では端のタイルが少なく、2マス以上のエリアを含むタイルが多かったため、エリアが閉じるまで非常に時間がかかり、運よく閉じれば一人だけ『生産』出来てやりたい放題というどうしようもない状態でした。

これを解決するために『開拓タイル』のバランスを一新することにしました。

具体的には、草原の比率を大きくしました。

これにより、エリアがすぐ閉じるようになるとともに、草原部分でタイルの接続が容易になることにより、次の問題点の解決にもつながりました。


タイルが一直線に伸びてしまう

最初のテストプレイ段階では、 個人ボードが存在せず、カルカソンヌのように現在置いてあるタイルに隣接させるようにタイルをつなげていくというルールになっていました。
しかし、隣接させてタイルを置く場合、2辺が固定されているところに置くのは非常に難しく、1辺で接続するように外に外にとタイルを繋げていく傾向が目立ちました。
これで出来上がった土地はひたすら縦か横に長く伸びてしまっており、絵面として美しくありませんでした。

『開拓王 The King of Frontier』では、自分の国を作る感覚というのを大事にしているため、これではよくないと思い、対策として考えたのが個人ボードで置ける範囲を限定するという方法でした。

コンポーネントが増えてしまい、原価的な問題があったため、紙のボードにしなくてはなりませんでしたが、
これにより、強制的にタイルを密集させておかなければならなくなることにより、結果的に絵面をきれいにするという目的を達成し、コンセプトの維持を図ることが出来ました。


『建物』を建てた都市を閉じるのが大変すぎる 

これはある意味あたりまえの結果だったかもしれません。
全ての建物が4面全てが空いている都市タイルであったため、建物を立てるとそのエリアを閉じるために最低でも4つのタイルが必要になり、非常に困難でした。

確かに、タイルを4面同じエリアとしない場合、『建物タイル』の置く向きが重要となってしまい、結果、最終的な絵面を見た際に、建物の向きがちぐはぐになるという問題点はありましたが、そうしない以上、この問題は解決しないと考え、建物のエリアをデザインしなおすことにしました。

この時点から『建物タイル』が『特殊効果を与えてくれるタイル』以上の存在になったと言えます。


タイルの種類が多すぎて把握するのが大変

これもあたりまえといえばそうなのかもしれませんが、特に『開拓王 The King of Frontier』の場合、タイルのカウンティングというのがどうしても必要になってきます。
そうなると、90種類以上もあると全部把握するのが困難であり、プレイアビリティが悪いという問題がありました。
そのため、タイルの種類数を減らし、4枚ずつ(または2枚ずつ)で統一することで、カウンティングの大変さを減らすことにしました。
また、このカウンティングを支援するため、タイルリストを添付し、確認しやすくすることにしました。


『建物タイル』が全然取り合いになってない

『建物タイル』は当初から、オープンマーケット制を採用していたのですが、その数は各3枚と大量にありました。
本来、『建物タイル』の取り合いというインタラクション要素を想定していたのですが、3枚ずつもあるとほとんどインタラクションを感じず、ソロプレイ感が強いということで、各1枚まで数を減らすこととしました。
また、プレイ人数ごとに『建物タイル』の数を変更することで、どのプレイ人数でもインタラクションを感じられるようにしました。


ゲーム中の体験の向上

上記の対策を取ることにより、ゲームとしてのプレイできるレベルに到達しました。
その後、ゲームバランスのチューニングと合わせて、ゲーム中の体験の向上を図るいくつかのアイデアを導入しました。

全埋めボーナス

個人ボードが出来たことで、大きく変わったことがあります。
ゲームにおけるパズル的要素の比重が非常に大きくなったことです。

これは当初想定していませんでしたが、パズル的な楽しさはこのゲームにとってプラスだと考え、『パズルを完成させた』ことに対する報酬を追加することにしました。
それが全埋めボーナス(+10VP)です。

なお、『開拓タイル』の枚数は4人プレイ時で全員が『開拓』を選択した時、ぎりぎりボードが埋まる枚数(一人当たり20枚)に調節することで、全埋めの成功が多すぎず、少なすぎないように調整しました。


初期タイル

当初、初期タイル(5枚引いて、3枚配置)のルールはなく、まっさらなボードからゲームスタートとなっていましたが、そうすると、1番手、2番手のプレイヤーは『開拓』以外の選択肢がなく、手番が意味をなしていませんでした。
初期タイルを導入することで、最初の手番からアクション選択の面白さを感じることが出来るとともに、初期タイルと場の建物タイルとを見比べて、戦略を練るという楽しみが増えました。
これは、どうしてもタイル引きの運要素が強くなってしまうこのゲームでの、運の要素を減少させる意味でも重要な要素となっています。


レアタイル

レアタイル

『開拓』アクションにおけるタイル引きの体験の向上のため、『レアタイル』を導入しました。
このゲームで最も頻繁に選択されるアクションである『開拓』の楽しみを増やしたかったためです。
また、初期タイルにてレアタイルがある場合、そのゲームに特別感を与えることが出来、リプレイ性を向上させることが出来るという点でも重要な要素です。

また、初期タイル導入によって、4人プレイで8枚タイルが減ることによるタイル枚数の調整という理由もあります。
 


ゲームバランスの調整 

さて、上記のような改良もディベロップメントの重要なポイントですが、『開拓王 The King of Frontier』のようなリソースマネジメントの要素を含むゲームの場合、ゲームバランスの調整というのが非常に重要になってきます。

『開拓王 The King of Frontier』の場合、調整対象は『建物タイルのコスト』だったり、『最終的な得点計算のレート』だったり、『手番のボーナス』だったりします。

これらを調整する際、自分は目指したいゲームのバランスというものを明確にしたうえで進めるのが非常に重要だと思っています。

『開拓王 The King of Frontier』では、以下のようなバランスを目指して調整を行いました。


『建物』を建てることが必須となるようなゲームバランス

ゲーム内容的に『建物』を建てないと『資源』が必要なくなり、『開拓』オンリーのゲームになってしまう可能性があるという問題があるため、これを『建物』の効果を強くすることによって解決することにしました。

これは自分が『開拓王 The King of Frontier』のメインの戦略は『建築戦略』であり、目当ての『建物』を如何にして獲得するかという点が重要な勝負のポイントだと考えていたからです。

当初、『お城』という『建物』は存在せず、より弱い効果の『建物』が多かったのですが、『お城』のような派手な効果の建物を4面都市というエリアが完成困難な『建物』に与えることで、よりゲームとして面白くなったと思っています。

お城
(『お城』はとてもリスキーにだが、重要な勝ち手段の1つになった)


また、ボードを埋めたり、エリアを完成させるために『建物』が利用できるよう、エリアを閉じるのを目的とする建物を全種類(『かかし』『石切場』『伐採地』『城門』の4種)を導入することとしました。

これは、勝利点や特殊効果に加えて、パズルを完成させるピースという目的でも『建物』が利用でき、『開拓』の運をカバーすることが出来るようになったことにより、より面白くなったと思います。

城門
(『お城』とかを閉じるのにも非常に重要)


『消費』を回せるかどうかのタイミングでゲームが終了する

ゲームバランス的に非常に難しかったのが『消費』アクションの扱いです。
『消費』自体はゲームの面白い要素となっているのですが、『消費』アクション自体を強くしてしまうと、最初に麦畑と都市作って、『生産』と『消費』を回しているだけでアドバンテージを得ることが出来てしまい、後から逆転することが非常に難しいという問題があります。
これでは運要素が強すぎますし、『生産』や『消費』を回すという行為は何の思考性もないためゲーム的に面白くありません。

そのため、『生産』『消費』を回すだけでアドバンテージを得るためには、『大きな市場』のような『建物』が必須となるようなバランスとし、ゲーム終了時(『開拓タイル』が切れる)までに回せるか否かというぎりぎりのバランスに調整しました。

このため、ゲーム終盤でも『生産』『消費』を回したいプレイヤーとそれを阻止するため『開拓』で早くゲームを終わらせたいプレイヤーが存在し、ゲーム終盤が白熱するようになりました。

大きな市場
(『生産』『消費』を一人で回すには『大きな市場』を使って10VP以上の獲得を狙いたい)

また、早い段階で上手く『生産』『消費』を回せてしまったプレイヤーが出たときには、逆転できないゲームが出来るだけ早く終わるように勝利点チップの枚数を少な目に設定することで対応しました。


この『消費を弱くする』というバランスについては、 『生産』『消費』を回すという行為自体の楽しさという点にはあまり着目しておらず、賛否両論あるかと思われますが、『開拓王 The King of Frontier』のその他の面の面白さを際立たせるという意味では正しい選択であったと思っています。


完成

以上の改良を経て、『開拓王 The King of Frontier』が完成しました。
(実際にはかなり省略しています。。。建物タイルのコスト調整とか手番ボーナスのバランスとか書いてたらきりのないことがたくさんあるのでw)

出来上がったゲームは面白かったでしょうか。


プレイしてくださった皆さんがこの制作ノートで上げているコンセプトのような楽しさを味わっていただけたら、このデザイン(ディベロップメント)は成功だったと言えるのだと思います。


 今回、制作ノートという形で『開拓王 The King of Frontier』の着想からゲームの完成までの過程を記事として紹介させていただきました。

私にとって初めてのボードゲーム制作であり、間違っているところや突っ込みどころがいろいろあると思います。
ただ、こういう他人の考えをたくさん見ること自体がきっと制作の役に立つと思っています。
この記事がこれからゲーム制作を始める方の役に立てたら嬉しいです。
そして、その方がまた制作ノートを公開して、ボードゲーム制作の輪が広がっていけばいいな、と思います。 

 

当サークル「Studio GG」はゲームマーケット2013秋にて『開拓王 The King of Frontier』を頒布させていただきました。
ご購入いただいた方、本当にありがとうございました。

今回は、 『開拓王 The King of Frontier』がどのようにしてできたのか、その過程を制作ノートという形で紹介させていただきたいと思います。
私自身、『開拓王 The King of Frontier』を制作するうえで、他の同人ボードゲームデザイナーの方の制作ノートやボードゲームに対する考察記事が大変参考になりました。特に、I was game さんのVorpals の制作ノート遊星からのフリーキックさんのゲーム・論考の記事は何度も読み返さえていただきました。
それらの記事には到底およびませんが、今後、ボードゲームを作られる方のなんらかの参考になればと思い、自分が受けた恩を返すつもりで制作ノートを公開させていただくことにいたしました。
ボードゲーム制作に関して初心者の記事ですので、間違っていることや、突っ込みどころもいっぱいあるかもしれませんが、こういう考え方で作っている人もいるんだ、という一例として受け取っていただければと思います。

制作ノートはデザイン編とディベロップメント編の2回に分けて紹介させていただきたいと思います。
今回は一つ目のデザイン編として、『開拓王 The King of Frontier』の着想からゲームの形になるまでについてを紹介します。 


図1

中量級ゲームを作ることにしたわけ

同人ボードゲームを作り始めた際、まずはラブレターのような十数枚のカードでできるシンプルなゲームの制作を考えていました。
当時、ちょうどラブレターなど500円ゲームズが話題になっており、その波に乗っかろうと思ったのが大きな要因です。
また、コンポーネントが少なくなるため、原価的にも制作のハードルが低かったからというのもあります。

具体的には、カード十数枚程度でできるワーカープレイスメントのようなゲームやじゃんけん風のカードゲーム、ピックアップ&デリバリー系ゲームなどいろいろ考えましたが、どれもこれも全く面白くありませんでした。

転機になったのは、テストプレイに付き合ってくれた嫁の「要素が少ないと考えることが単調すぎて面白くない」というコメントでした。


非ボードゲーマーでもプレイできるようなシンプルなゲームを作ろうとした結果、非ボードゲーマーの人に単純すぎると言われてしまったわけです!


そこを機に、「コンポーネントの少ないシンプルなゲーム」を作ろうとすることはやめました。
そもそも、自分自身がラブレターを面白いと思っていないのに、それを目指すのはまったくもっておかしな話だったのです。


自分の好きな系統のゲームを作ろう――そう方針を改めました。

私のゲームの好みは以下の通りです。
  • リソースマネジメント大好き
  • 長いゲームはしんどい(60分以内に終わりたい)
  • 戦術より戦略
  • テーマがないとゲームに入り込めない
  • (家族とできるよう)ルールはシンプルがいい
  • 特殊能力大好き(MTGプレイヤーですし)
これらから、『中量級のリソースマネジメントゲームで特殊能力ありでルールはシンプル』が目指すゲームの方針になりました。


『開拓王 The King of Frontier』の着想

さて、中量級ゲームをつくるとなると、問題となってくるのは「価格」です。

シンプルな軽量級ゲームは原価も安くなるため、購入のハードルも低くなります。
しかし、中量級ゲームではコンポーネントが増えるため、原価も高くなり、購入のハードルが上がってしまい、在庫リスクも大きくなります。

そのため、いったいどういうコンポーネント構成がいいのか、印刷を頼もうと思っていた萬印堂さんの小ロット印刷の価格表とにらめっこしました。
そこで思ったのが、「タイルわりと安いな」でした。


これにより、タイル配置ゲームという選択肢が増え、その方向で面白そうなゲームが作れないか考えることにしました。

『開拓王 The King of Frontier』の直接的な着想を得たのは部屋とボードゲームと私と酒と泪と男と女というサイトの『ウォルナットグローブ開拓史』に関する記事からです。

zhlju
(ウォルナットグローブ開拓史はこんな感じ 部屋とボードゲームと私と酒と泪と男と女より)

私は『ウォルナットグローブ開拓史』をプレイしたことはありませんが、この『開拓』によってタイルを配置し、配置したタイルから資源が『生産』できるというシステムは非常に気に入りました。

ただ、『ウォルナットグローブ開拓史』では、タイルを配置する際、絵がつながるように置く必要がなく(つなげた方が利点はありますが)、最終的な見た目があまり美しくないな、という点で不満がありました。


そこで私は、『ウォルナットグローブ開拓史』の『開拓』『生産』システムで、『カルカソンヌ』のように綺麗な絵を作れないだろうか、と考えました。

これが、『開拓王 The King of Frontier』の原点です。


ゲームシステムの構築

さて、『ウォルナットグローブ開拓史』のような『開拓』『生産』を持ち、かつ『カルカソンヌ』のように絵がつながるようにタイルを配置する――とだけ決まっても、ゲームになっていません。
この着想をゲームにするため、以下の要素を追加しました。
  • 建物タイル
  • 消費アクション
  • ヴァリアブルフェイズシステム
  • 終了条件と得点計算
以下では各要素毎に何故そのシステムにしたのかについて説明していきたいと思います。


建物タイル

建築タイル

『生産』した資源の利用先として、導入されたのがこの『建物タイル』です。

上でも書いたように、私は特殊能力が大好きなので、特殊能力を与えてくれる要素として導入しました。
特殊能力はゲームに深みと多様性を付加してくれますし、コンボを考えるのも楽しいです。

また、これ以前にボードゲームの面白さについて研究していた際、『複数の特殊能力の選択肢の中から使用したいものを選ぶ』というのが、ゲームの重要な面白い要素ではないかと考察していたということもあります。
(例えば、プエルトリコやドミニオン、世界の七不思議(を筆頭とするドラフトゲー)など、人気のあるゲームにこの要素が含まれています。Magic: The Gathering のデッキ構築とかもこれに相当しますね)

『建物』は最初カードか何か別のコンポーネントで考えていましたが、『建物』をタイルにすることで開拓によって広げた領域に直接建物を建てることが出来ると思いつき、その案を採用しました。

『開拓王 The King of Frontier』では、『タイルで自分だけの箱庭(国)を作る満足感』を重視しています。
これは負けても楽しいボードゲームを作りたかったためです。

ボードゲームには、いろいろな楽しさを導入できます。勝負の楽しさもその一つなのですが、勝負だけがボードゲームの楽しさではありません。
私は、ボードゲームを作るうえで、勝負以外の楽しい体験をゲーム中に取り入れることを重要視し、『開拓王 The King of Frontier』ではそれを『タイルで自分だけの箱庭(国)を作る満足感』 と置いたのです。

『建物』をタイルとすることで、箱庭としての一体感が増し、満足感がより向上すると考え、『開拓タイル』と一緒に配置することにしたのです。


消費アクション

消費


『生産』した資源のもう一つの利用先として導入したのがこの『消費』アクションです。

これを導入した理由は以下の通りです。
  • 建物タイルを導入したことにより自動的に加えられた『都市』というエリアの利用法を作る
  • 建物以外の資源の利用先を作ることで資源毎の特性を出す
  • 勝ち筋を増やす
資源を『特殊能力付きアイテム』と『勝利点』のそれぞれに変換できるというのは、ボードゲームではよくある要素であったため、『開拓王 The King of Frontier』でもそれを踏襲したという形になります。


ヴァリアブルフェイズシステム

Puertorico-SanJuan-RaceForTheGalaxy

フェイズ進行の仕組みとして取り入れたのがこのヴァリアブルフェイズシステムです。

これを取り入れた理由は、 『生産』のメカニズムを『完成したエリアを選び、その生産マス全てに資源を置く』としたことに起因します。

例えば、『開拓』『生産』『建築』『消費』が順々に廻って来るフェイズ進行にした場合、『開拓』で完成したエリアが出来なかった場合、それ以降のフェイズで何もできなくなってしまうわけです。
これは非常に問題であるため、『開拓』『生産』『建築』『消費』のアクションは任意の順番で廻って来るようなシステムにする必要がありました。 

アクションポイントなどを利用するという方法もあったのですが、現状のゲームシステムが非常にインタラクションが低いこともあり、ヴァリアブルフェイズシステムを取り入れることにしました。

ただし、プエルトリコやレースフォーザギャラクシーのヴァリアブルフェイズをそのまま取り入れることはしませんでした。
その理由は、それらのゲームが煩雑だと考えたからです。
また、コンポーネントが増えるという問題点もありました。

そのため、役割タイルやスタートプレイヤーなどが必要のない、新しいヴァリアブルフェイズシステムとして考えられたのが現在の『開拓王 The King of Frontier』のシステムです。

もともと、プエルトリコやサンファンのヴァリアブルフェイズシステムは役割を選択したプレイヤー以外もアクションを行える『フリーライド』の仕組みとワーカープレイスメントのような手番ボーナスの『早い者勝ち』システムが混ざったシステムになっています。
また、レースフォーザギャラクシーは『フリーライド』ではあるのですが、同時選択し、かぶったアクションは1回しか実行しないことでフェイズの偏りを防いでいます。

これに対し、『開拓王 The King of Frontier』では『フリーライド』の仕組みのみを導入し、あえてアクションによりフェイズの偏りを作ることが出来るようにすることで展開に多様性を持たせています。
また、手番ボーナスを可能な限り削ることによって、『フリーライド』の重要性を上げ、インタラクション性を上げています。

この変更により、『開拓王 The King of Frontier』では、既存のヴァリアブルフェイズシステムとは少し違うプレイ感となりました。
ただ、この点に関しては、紹介記事で『プエルトリコ』を引き合いに出して紹介したことにより、思ったのと違う感を与えてしまった点は失敗だったかもしれません(『レースフォーザギャラクシー』にしておけばよかったのかもしれませんね)。


終了条件と得点計算

スコアシート

ゲームの勝敗を決めるのに必要なのが、終了条件と得点計算です。

『開拓王 The King of Frontier』では 、3つの終了条件を設定しています。
これはそれぞれ、『開拓』や『消費』のアクションが意味をなくしてしまうときにはゲームを終了するということを意味しています。
当初、『建物タイル』が切れた場合という終了条件も考えましたが、『建物』は建築後、『開拓』でエリアを完成させる必要があるため、『建物タイル』が切れた時点でのゲーム終了はなくしました。

次に得点計算に関してですが、『開拓王 The King of Frontier』では、『プエルトリコ』などで得点換算される『建物』と『勝利点チップ』以外に、『完成したエリアの生産・消費マス』と『空きマス』に関する得点を追加しています。

これは、『開拓王 The King of Frontier』には『プエルトリコ』にはない3つめの勝ち筋を導入したかったためです。

私はバランスの良いゲームを作るためには戦略は3つある方が望ましいと考えています。
これは長年 Magic: the Gathering をやってきた経験によるものです。

Magic: the Gathering では、安定した環境では必ず戦略の三すくみ構造が生きています。
私がメインでやっているレガシーフォーマットでは、大抵『コンボ<クロックパーミッション<ビートダウン』の三すくみの環境になっています。
この三すくみ構造は、『相手より若干遅い戦略が強い』という構造になっており、拡大再生産を含むシステムでバランスを取る際には非常に有効な手段です。

『開拓王 The King of Frontier』ではこれを、『開拓戦略<建築戦略<消費戦略』とおいて、戦略の三すくみ構造を導入することにしました。 

これを実現するため、『完成したエリアの生産・消費マス』に点数をつけるようにしたのです。
(この時点で、個人ボードは存在しなかったため、空きマスの得点は存在しませんでした)


テストプレイへ
 
これで、ゲームとしてプレイすることが出来るようになりました。
ゲームデザイン完了です!

この後、実際にタイルを試作し、テストプレイを行いました(ここまでは全て脳内のみで構築しています)。

テストプレイを通して『開拓王 The King of Frontier』がどのように変わっていったかについては、次回のディベロップメント編にて紹介していきたいと思います!


 

このページのトップヘ