今回は前回に続き、『開拓王 The King of Frontier』がどのようにしてできたのか、その過程を制作ノートという形で紹介させていただきたいと思います。

今回は二つ目のディベロップメント編として、『開拓王 The King of Frontier』がテストプレイによってどのように変わっていったかについて紹介します。
一つ目のデザイン編も合わせて読んでいただければ幸いです。


図2

初期テスト版

デザインしたゲームについて机上の検討だけではバランスが難しい部分(主に、『開拓タイル』『建物タイル』の種類とバランス)をテストプレイで検証していく必要がありました。

最初に作ったテスト版は以下のようなものです。

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(厚紙に印刷した紙を貼って作りました)

『開拓タイル』上に描かれるエリアは森、岩場、麦畑、都市、草原の5つのエリアがあり、
それを4辺それぞれに割り当てることを考えると、ものすごい種類のタイルが出来上がってしまいます。
そのため、タイルの種類を絞る必要がありました。

まず、ごちゃごちゃした印象を与えないため、タイルには草原を含む最大3つのエリアしか載せないこととしました。
(心理学的にも人が一度に把握できるのは3色までだそうです。4色以上あるとめんどくさいと感じるよう)

それで絞ったとしても、約90種類以上のタイルが出来てしまったのですが、とりあえずそのままプレイしてみることにしました。


次に『建物タイル』ですが、当初『建物タイル』は全面草原か全面都市のどちらかのみを考えていました。
これは、『建物』をどの向きに置いても同じになるようにしたかったためです。
どの向きに置いても同じになるようにすれば、おのずと自分から見て正しい向きになるように置くため、出来上がったタイル群の見た目が整うと考えたためです。

『建物タイル』の効果は、カルカソンヌやプエルトリコなどのゲームを参考に効果を作りました。これは実際に完成版まで残っているのがわかると思います。
同人ということもあり、パロディ的な意味合いを出したかったため、名前および効果は参考にしたものできるだけそのまま使用しました。(元ネタがわかるとちょっとニヤッとできますよね)

『建物タイル』をデザインする際に、資源の木と石の特性を出すことに注意しました。
木の建物は『消費』を支援する建物やユーティリティ的な建物が多く、コストが低めに設定されています。
それに対し、石の建物は建築戦略のための、勝利点の多い建物が多く、コストが高めに設定されています。
また、木および石の両方が必要な建物は、草原の建物になっており、開拓戦略を支援するように作られています。
建物自身は、最初のデザイン時から大きく変化しましたが、このあたりの特性については完成版でもそのまま残っています。

こうして出来たテスト版、(自分で言うのもなんですが)ぱっと見よくできてそうですが、まったくゲームになっていませんでした。
何故ゲームになっていなかったのかについて以下で説明していきます。


テストプレイにより判明した問題点

そもそもエリアが閉じない

まず、最初の問題点がこれでした。
初期段階では端のタイルが少なく、2マス以上のエリアを含むタイルが多かったため、エリアが閉じるまで非常に時間がかかり、運よく閉じれば一人だけ『生産』出来てやりたい放題というどうしようもない状態でした。

これを解決するために『開拓タイル』のバランスを一新することにしました。

具体的には、草原の比率を大きくしました。

これにより、エリアがすぐ閉じるようになるとともに、草原部分でタイルの接続が容易になることにより、次の問題点の解決にもつながりました。


タイルが一直線に伸びてしまう

最初のテストプレイ段階では、 個人ボードが存在せず、カルカソンヌのように現在置いてあるタイルに隣接させるようにタイルをつなげていくというルールになっていました。
しかし、隣接させてタイルを置く場合、2辺が固定されているところに置くのは非常に難しく、1辺で接続するように外に外にとタイルを繋げていく傾向が目立ちました。
これで出来上がった土地はひたすら縦か横に長く伸びてしまっており、絵面として美しくありませんでした。

『開拓王 The King of Frontier』では、自分の国を作る感覚というのを大事にしているため、これではよくないと思い、対策として考えたのが個人ボードで置ける範囲を限定するという方法でした。

コンポーネントが増えてしまい、原価的な問題があったため、紙のボードにしなくてはなりませんでしたが、
これにより、強制的にタイルを密集させておかなければならなくなることにより、結果的に絵面をきれいにするという目的を達成し、コンセプトの維持を図ることが出来ました。


『建物』を建てた都市を閉じるのが大変すぎる 

これはある意味あたりまえの結果だったかもしれません。
全ての建物が4面全てが空いている都市タイルであったため、建物を立てるとそのエリアを閉じるために最低でも4つのタイルが必要になり、非常に困難でした。

確かに、タイルを4面同じエリアとしない場合、『建物タイル』の置く向きが重要となってしまい、結果、最終的な絵面を見た際に、建物の向きがちぐはぐになるという問題点はありましたが、そうしない以上、この問題は解決しないと考え、建物のエリアをデザインしなおすことにしました。

この時点から『建物タイル』が『特殊効果を与えてくれるタイル』以上の存在になったと言えます。


タイルの種類が多すぎて把握するのが大変

これもあたりまえといえばそうなのかもしれませんが、特に『開拓王 The King of Frontier』の場合、タイルのカウンティングというのがどうしても必要になってきます。
そうなると、90種類以上もあると全部把握するのが困難であり、プレイアビリティが悪いという問題がありました。
そのため、タイルの種類数を減らし、4枚ずつ(または2枚ずつ)で統一することで、カウンティングの大変さを減らすことにしました。
また、このカウンティングを支援するため、タイルリストを添付し、確認しやすくすることにしました。


『建物タイル』が全然取り合いになってない

『建物タイル』は当初から、オープンマーケット制を採用していたのですが、その数は各3枚と大量にありました。
本来、『建物タイル』の取り合いというインタラクション要素を想定していたのですが、3枚ずつもあるとほとんどインタラクションを感じず、ソロプレイ感が強いということで、各1枚まで数を減らすこととしました。
また、プレイ人数ごとに『建物タイル』の数を変更することで、どのプレイ人数でもインタラクションを感じられるようにしました。


ゲーム中の体験の向上

上記の対策を取ることにより、ゲームとしてのプレイできるレベルに到達しました。
その後、ゲームバランスのチューニングと合わせて、ゲーム中の体験の向上を図るいくつかのアイデアを導入しました。

全埋めボーナス

個人ボードが出来たことで、大きく変わったことがあります。
ゲームにおけるパズル的要素の比重が非常に大きくなったことです。

これは当初想定していませんでしたが、パズル的な楽しさはこのゲームにとってプラスだと考え、『パズルを完成させた』ことに対する報酬を追加することにしました。
それが全埋めボーナス(+10VP)です。

なお、『開拓タイル』の枚数は4人プレイ時で全員が『開拓』を選択した時、ぎりぎりボードが埋まる枚数(一人当たり20枚)に調節することで、全埋めの成功が多すぎず、少なすぎないように調整しました。


初期タイル

当初、初期タイル(5枚引いて、3枚配置)のルールはなく、まっさらなボードからゲームスタートとなっていましたが、そうすると、1番手、2番手のプレイヤーは『開拓』以外の選択肢がなく、手番が意味をなしていませんでした。
初期タイルを導入することで、最初の手番からアクション選択の面白さを感じることが出来るとともに、初期タイルと場の建物タイルとを見比べて、戦略を練るという楽しみが増えました。
これは、どうしてもタイル引きの運要素が強くなってしまうこのゲームでの、運の要素を減少させる意味でも重要な要素となっています。


レアタイル

レアタイル

『開拓』アクションにおけるタイル引きの体験の向上のため、『レアタイル』を導入しました。
このゲームで最も頻繁に選択されるアクションである『開拓』の楽しみを増やしたかったためです。
また、初期タイルにてレアタイルがある場合、そのゲームに特別感を与えることが出来、リプレイ性を向上させることが出来るという点でも重要な要素です。

また、初期タイル導入によって、4人プレイで8枚タイルが減ることによるタイル枚数の調整という理由もあります。
 


ゲームバランスの調整 

さて、上記のような改良もディベロップメントの重要なポイントですが、『開拓王 The King of Frontier』のようなリソースマネジメントの要素を含むゲームの場合、ゲームバランスの調整というのが非常に重要になってきます。

『開拓王 The King of Frontier』の場合、調整対象は『建物タイルのコスト』だったり、『最終的な得点計算のレート』だったり、『手番のボーナス』だったりします。

これらを調整する際、自分は目指したいゲームのバランスというものを明確にしたうえで進めるのが非常に重要だと思っています。

『開拓王 The King of Frontier』では、以下のようなバランスを目指して調整を行いました。


『建物』を建てることが必須となるようなゲームバランス

ゲーム内容的に『建物』を建てないと『資源』が必要なくなり、『開拓』オンリーのゲームになってしまう可能性があるという問題があるため、これを『建物』の効果を強くすることによって解決することにしました。

これは自分が『開拓王 The King of Frontier』のメインの戦略は『建築戦略』であり、目当ての『建物』を如何にして獲得するかという点が重要な勝負のポイントだと考えていたからです。

当初、『お城』という『建物』は存在せず、より弱い効果の『建物』が多かったのですが、『お城』のような派手な効果の建物を4面都市というエリアが完成困難な『建物』に与えることで、よりゲームとして面白くなったと思っています。

お城
(『お城』はとてもリスキーにだが、重要な勝ち手段の1つになった)


また、ボードを埋めたり、エリアを完成させるために『建物』が利用できるよう、エリアを閉じるのを目的とする建物を全種類(『かかし』『石切場』『伐採地』『城門』の4種)を導入することとしました。

これは、勝利点や特殊効果に加えて、パズルを完成させるピースという目的でも『建物』が利用でき、『開拓』の運をカバーすることが出来るようになったことにより、より面白くなったと思います。

城門
(『お城』とかを閉じるのにも非常に重要)


『消費』を回せるかどうかのタイミングでゲームが終了する

ゲームバランス的に非常に難しかったのが『消費』アクションの扱いです。
『消費』自体はゲームの面白い要素となっているのですが、『消費』アクション自体を強くしてしまうと、最初に麦畑と都市作って、『生産』と『消費』を回しているだけでアドバンテージを得ることが出来てしまい、後から逆転することが非常に難しいという問題があります。
これでは運要素が強すぎますし、『生産』や『消費』を回すという行為は何の思考性もないためゲーム的に面白くありません。

そのため、『生産』『消費』を回すだけでアドバンテージを得るためには、『大きな市場』のような『建物』が必須となるようなバランスとし、ゲーム終了時(『開拓タイル』が切れる)までに回せるか否かというぎりぎりのバランスに調整しました。

このため、ゲーム終盤でも『生産』『消費』を回したいプレイヤーとそれを阻止するため『開拓』で早くゲームを終わらせたいプレイヤーが存在し、ゲーム終盤が白熱するようになりました。

大きな市場
(『生産』『消費』を一人で回すには『大きな市場』を使って10VP以上の獲得を狙いたい)

また、早い段階で上手く『生産』『消費』を回せてしまったプレイヤーが出たときには、逆転できないゲームが出来るだけ早く終わるように勝利点チップの枚数を少な目に設定することで対応しました。


この『消費を弱くする』というバランスについては、 『生産』『消費』を回すという行為自体の楽しさという点にはあまり着目しておらず、賛否両論あるかと思われますが、『開拓王 The King of Frontier』のその他の面の面白さを際立たせるという意味では正しい選択であったと思っています。


完成

以上の改良を経て、『開拓王 The King of Frontier』が完成しました。
(実際にはかなり省略しています。。。建物タイルのコスト調整とか手番ボーナスのバランスとか書いてたらきりのないことがたくさんあるのでw)

出来上がったゲームは面白かったでしょうか。


プレイしてくださった皆さんがこの制作ノートで上げているコンセプトのような楽しさを味わっていただけたら、このデザイン(ディベロップメント)は成功だったと言えるのだと思います。


 今回、制作ノートという形で『開拓王 The King of Frontier』の着想からゲームの完成までの過程を記事として紹介させていただきました。

私にとって初めてのボードゲーム制作であり、間違っているところや突っ込みどころがいろいろあると思います。
ただ、こういう他人の考えをたくさん見ること自体がきっと制作の役に立つと思っています。
この記事がこれからゲーム制作を始める方の役に立てたら嬉しいです。
そして、その方がまた制作ノートを公開して、ボードゲーム制作の輪が広がっていけばいいな、と思います。